[episode37]幸せな記憶のために 後日談
- 3月18日
- 読了時間: 2分
駅前のカフェスタンドは、ほかほかのカップから立つ湯気と、浅い秋の匂いで満ちていた。
告白から数日後の帰り道。湊は玲央のとなりを、自然体で歩いている。
カップをふたつ持って運びながら玲央が笑う。
「ほんとに付き合ってくれるんだね。まだ信じられない」
「そんなに意外?」と湊は表情を崩さず目だけで微笑んだ。
風が冷たい。カフェの熱を持ち去ろうとするのに、玲央の言葉は嘘みたいにあったかい。
「……今日の湊さん、やたら綺麗じゃないですか?」
突然の視点に、湊は思わず一拍遅れてまばたきをした。
玲央はそれを見てくすくす笑う。
「いや、俺のこと少しは意識してくれてるからかなって」
「なんだ、それ」と言いつつ、玲央の観察眼に少しだけ胸がくすぐったくなる。
玲央はさらに踏み込む。
「じゃあ──もう、恋してるから!…ですか?」
ひゅう、と風が耳を撫でた。
玲央は身をわずかに寄せる。
「……わからない質問をするね」と湊がコーヒーを啜ると、玲央は口を尖らせた。
むすっとするが声は明るい。
「素直じゃないなぁ。大丈夫、俺はちゃんと好きですよ」
真っ直ぐすぎるその熱量を、湊は心でこっそり受け止める。
「なら、今はそれで十分」
「え?」
「君が言ってくれた“好き”の続きは、これから一緒に考えるんだろ。……俺は、…逃げないからさ」
玲央の顔がぱっと晴れて屈託のない笑顔を見せた。
「じゃあまずは、毎日コーヒー奢らせてください」
「それはやめなさい」
「たまには甘えてもいいのに」
「甘やかされてるのは君のほうでしょ」
互いに軽口を叩きつつ、歩幅だけはぴったり同じ。
終わりを意識する恋ではなく、ただ幸せになるために彼の気持ちに寄り添う恋。
湊がその時を迎えたら、きっと玲央との記憶が宝物になるだろう。
<あとがき>
何ヶ月も間があいてしまいました… こちらの作品の後日談となります。
湊と玲央、オフィスラブ年下攻め短編ってかんじです。

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