![[episode31]双つの命と彼岸花](https://static.wixstatic.com/media/114c79_104954b917334c9d9a7af5d5c013291c~mv2.jpg/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_104954b917334c9d9a7af5d5c013291c~mv2.webp)
![[episode31]双つの命と彼岸花](https://static.wixstatic.com/media/114c79_104954b917334c9d9a7af5d5c013291c~mv2.jpg/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/114c79_104954b917334c9d9a7af5d5c013291c~mv2.webp)
[episode31]双つの命と彼岸花
白い天井をぼんやりと見つめながら、肺の奥に溜まった空気をゆっくり吐き出した。 秋分の夜。病室の窓から射す月の光が、点滴の管を淡く照らしている。 胸の奥が痛む。命が削れていく感覚が、もう恐怖ではなく淡い諦めとして身体に馴染んでいた。...
9月25日
![[episode30]君を迎える夜](https://static.wixstatic.com/media/114c79_b8cd9409c62b442b8a2960e4ade896c5~mv2.jpg/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_b8cd9409c62b442b8a2960e4ade896c5~mv2.webp)
![[episode30]君を迎える夜](https://static.wixstatic.com/media/114c79_b8cd9409c62b442b8a2960e4ade896c5~mv2.jpg/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/114c79_b8cd9409c62b442b8a2960e4ade896c5~mv2.webp)
[episode30]君を迎える夜
夏の夜の匂いが、夢の中に濃く漂っていた。湿った夜風に混じる線香花火の煙、屋台から流れる甘いソースの匂い。遠くで太鼓の音が響き、ちょうちんの光が並んで揺れている。 アオとモモは、並んでその光景を見つめていた。 今回の夢主は四十代半ばの男性。布団に横たわり、衰えた身体で呼吸を細...
9月23日
![[episode29]閑話・愛についての雑談](https://static.wixstatic.com/media/114c79_4ff459b96d444d888eb203a7b8052a70~mv2.jpg/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_4ff459b96d444d888eb203a7b8052a70~mv2.webp)
![[episode29]閑話・愛についての雑談](https://static.wixstatic.com/media/114c79_4ff459b96d444d888eb203a7b8052a70~mv2.jpg/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/114c79_4ff459b96d444d888eb203a7b8052a70~mv2.webp)
[episode29]閑話・愛についての雑談
月の家の窓辺。 アオは机に肘をついて、いつものように黒い空をぼんやり眺めていた。静かな時間の中、ふと口から言葉がこぼれる。 「……モモ。きみは、愛について、どう思う?」 何気ない調子だった。けれどモモは読んでいた本をぱたりと閉じて、にやりと口角を上げる。...
9月18日
![[episode28]消えない旋律](https://static.wixstatic.com/media/114c79_8883d620a06b42a2beb5dbe3d8880c17~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_8883d620a06b42a2beb5dbe3d8880c17~mv2.webp)
![[episode28]消えない旋律](https://static.wixstatic.com/media/114c79_8883d620a06b42a2beb5dbe3d8880c17~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_8883d620a06b42a2beb5dbe3d8880c17~mv2.webp)
[episode28]消えない旋律
胸の奥が重たく、呼吸は細く途切れ途切れにしか続かない。 病に蝕まれた体はもう、自分のものではないように思えた。 ――もうすぐ終わるのだろうか。 まぶたを閉じたその瞬間、美緒の意識は静かに夢の世界へと沈み込んでいった。 *** 「……来たみたいだね」...
9月16日
![[episode27]名前のない箱](https://static.wixstatic.com/media/114c79_d4cc83857e3e47478471cd54cabb4f1d~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_d4cc83857e3e47478471cd54cabb4f1d~mv2.webp)
![[episode27]名前のない箱](https://static.wixstatic.com/media/114c79_d4cc83857e3e47478471cd54cabb4f1d~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_d4cc83857e3e47478471cd54cabb4f1d~mv2.webp)
[episode27]名前のない箱
アオは、廃材を両腕に抱えて帰ってきたモモをじっと見ていた。 夢の中で拾ったらしい板切れや木片。どれも色褪せ、角がささくれている。 モモは「そのうち役に立つかもしれねえだろ」と笑って部屋の片隅に置いてどこかへ消えたが、アオの目には、その傷んだ木が不思議と柔らかい光を帯びて見え...
9月8日


[episode26]古書店と失われた手紙
アオが目を開くと、そこは薄暗い古書店の中だった。 棚には古びた本がぎっしりと詰め込まれ、紙とインクの匂いが漂っている。雨の音が外からかすかに聞こえ、窓辺には埃をかぶった便箋の束が置かれていた。 「今回は、…本の匂いか。しかも、どれもこれも古いものばかり…。アオ、お前こういう...
9月3日
![[episode25]未完成のキャンバス](https://static.wixstatic.com/media/114c79_9f539aa776144e13bd7a5948588cf797~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_9f539aa776144e13bd7a5948588cf797~mv2.webp)
![[episode25]未完成のキャンバス](https://static.wixstatic.com/media/114c79_9f539aa776144e13bd7a5948588cf797~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_9f539aa776144e13bd7a5948588cf797~mv2.webp)
[episode25]未完成のキャンバス
アトリエの窓から射し込む光が、柔らかく埃を照らしていた。木の床には絵の具が飛び散り、キャンバスの白さが時の流れに黄ばんでいる。 そこに佇むのは、少しくたびれた姿の青年――小林隼人だった。 夢の主の記憶が形作る場所。アオとモモは、その中心に導かれるように立っていた。...
9月1日


[episode24]時計職人と失われた針音
古びた木の扉を開けると、そこは小さな時計屋だった。壁一面に、時を刻むはずの時計たちが静かに並んでいる。奥の工房では、白髪の老人が机に向かい、手元の懐中時計をじっと覗き込んでいた。 「……もう、動かなくなって久しいな」 彼の手にあるのは、若い頃に弟子であり恋人だった青年から贈...
8月26日


[episode23]出会いの予兆
アオが目を覚ました時には、すでに月にいた。 自分が生まれ育った記憶も、どうしてここにいるのかも分からない。ただ気がつけば、小さな庭と畑、泉を抱いた家で暮らしていた。 庭の畑には月菜が育ち、空腹になればそれを摘んで皿に盛る。味気ないがそれで空腹は満たされ、住処の裏にある泉から...
8月23日


[episode22] The Last Curtain Call
体育館の天井は高く、夏の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。 そこは夢の中――だが、19歳の秋人には、まるで昨日のことのように思えた。 高校の文化祭で使った体育館。舞台袖から眺めた景色は、憧れと緊張で胸を震わせた、あの日のままだった。...
8月22日