

[episode21]廃墟の遊園地と最後の客
地上へと降りたアオが最初に目を開けたとき、そこは闇に沈んだ遊園地だった。 折れた柵、剥がれたペンキ、風にきしむ観覧車。長く打ち捨てられた場所に、ひとりの老人が立っていた。 背を少し丸めた男は、フェンスに手をかけ、懐かしげに目を細めている。...
8月20日
![[episode20]甘眠の密猟者 ― The Sweet Sleep Poacher ―](https://static.wixstatic.com/media/114c79_f8b2aac14dfe430cb99e261268814069~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_f8b2aac14dfe430cb99e261268814069~mv2.webp)
![[episode20]甘眠の密猟者 ― The Sweet Sleep Poacher ―](https://static.wixstatic.com/media/114c79_f8b2aac14dfe430cb99e261268814069~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_f8b2aac14dfe430cb99e261268814069~mv2.webp)
[episode20]甘眠の密猟者 ― The Sweet Sleep Poacher ―
深夜の街は、酔いと孤独が入り混じる。ネオンの残光がアスファルトを濡らし、遠くでタクシーのクラクションが響く。 アオが寝静まった後、こっそりと抜け出して地上に降りてきたモモは、人間の姿になり、黒いコートの襟を立てながら雑踏の影を抜けていた。...
8月16日
![[episode19]愛して。](https://static.wixstatic.com/media/114c79_c3860afe54224843ba1609dee103e6e5~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_c3860afe54224843ba1609dee103e6e5~mv2.webp)
![[episode19]愛して。](https://static.wixstatic.com/media/114c79_c3860afe54224843ba1609dee103e6e5~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_c3860afe54224843ba1609dee103e6e5~mv2.webp)
[episode19]愛して。
底なしの沼みたいな、夜を生きていた。 一度足を踏み入れたら、抜け出すことなんてできない。 25歳の晴真(はるま)は、もう長いことその沼に沈んでいた。 安いホテルの一室、男の匂いと煙草の煙。 ポケットに入るだけの金をもらって、そのまま次の相手を探す。...
8月15日
![[episode18]If You Could Hear Me Now](https://static.wixstatic.com/media/114c79_eb3c099e3e194f958757e0f943e136ff~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_eb3c099e3e194f958757e0f943e136ff~mv2.webp)
![[episode18]If You Could Hear Me Now](https://static.wixstatic.com/media/114c79_eb3c099e3e194f958757e0f943e136ff~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_eb3c099e3e194f958757e0f943e136ff~mv2.webp)
[episode18]If You Could Hear Me Now
夜の街を、柔らかな風が抜けていく。 どこかのバーから漏れるギターの音と、誰かの笑い声。それらがゆるやかに溶け合って、遠くの空へ吸い込まれていった。 二十歳になったばかりの青年 ジェイミー・セラフィンは、その夜、交通事故に遭った。...
8月9日
![[episode17]終わりじゃない旅路](https://static.wixstatic.com/media/114c79_a7a7c46c4906483b804761a397ffcca1~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_a7a7c46c4906483b804761a397ffcca1~mv2.webp)
![[episode17]終わりじゃない旅路](https://static.wixstatic.com/media/114c79_a7a7c46c4906483b804761a397ffcca1~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_a7a7c46c4906483b804761a397ffcca1~mv2.webp)
[episode17]終わりじゃない旅路
ホスピスの病室は、静かでやわらかな光に包まれていた。 カーテン越しに夏の日差しが差し込んで、白いリネンを淡く照らしている。窓の外では蝉が鳴いていた。 柊 真澄(ひいらぎ ますみ)、四十歳。 彼は元・看護師だった。何人もの患者の最期に寄り添い、涙も、感謝の言葉も、たくさん受け...
8月8日
![[episode16]忘却の白い闇](https://static.wixstatic.com/media/114c79_6d31ac375cb84e858241a74acf29d86f~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_6d31ac375cb84e858241a74acf29d86f~mv2.webp)
![[episode16]忘却の白い闇](https://static.wixstatic.com/media/114c79_6d31ac375cb84e858241a74acf29d86f~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_6d31ac375cb84e858241a74acf29d86f~mv2.webp)
[episode16]忘却の白い闇
白川一誠(しらかわ いっせい)は、病室の窓辺に腰かけていた。曇りガラスの向こうで風が揺れる。蝉の声がかすかに聞こえ、季節が夏であることだけは、なんとなく理解できた。 ただ、それ以外のことが、よくわからない。 目の前で笑っているのが誰か。そもそも自分が、ここにいる理由さえも。...
8月7日
![[episode15]悪夢を超えて](https://static.wixstatic.com/media/114c79_9cad2c90035f48c3928bab266cfc4e4e~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_9cad2c90035f48c3928bab266cfc4e4e~mv2.webp)
![[episode15]悪夢を超えて](https://static.wixstatic.com/media/114c79_9cad2c90035f48c3928bab266cfc4e4e~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_9cad2c90035f48c3928bab266cfc4e4e~mv2.webp)
[episode15]悪夢を超えて
目を閉じる前、凪人の最後の視界は――図書館の閲覧室の白い蛍光灯だった。 金曜の夜、いつも通り閉館準備をしていた。貸出端末を落とし、カウンターの明かりを落とし、書架の巡回を終えて戸締まりをする。 そのはずだった。 階段の踊り場に差しかかった瞬間、誰かの気配を感じた。 振り返る...
8月4日
![[episode14]色づく世界、月の食卓で](https://static.wixstatic.com/media/114c79_48cb7567d1e540049ee8741b5809e6b3~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_48cb7567d1e540049ee8741b5809e6b3~mv2.webp)
![[episode14]色づく世界、月の食卓で](https://static.wixstatic.com/media/114c79_48cb7567d1e540049ee8741b5809e6b3~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_48cb7567d1e540049ee8741b5809e6b3~mv2.webp)
[episode14]色づく世界、月の食卓で
月に棲んでいると、ふとした拍子に地上の味が恋しくなる。 モモは時折、地上にこっそり降りては食材を仕入れていた。 任務を終えて戻ったとある夜、アオはぼんやりと星を眺めていた。 しんと静まり返った月の地表に、夜の帳が降りている。 おなか、すいたな…...
7月31日
![[episode13]ふたりの部屋に灯りはともる](https://static.wixstatic.com/media/114c79_736ebb262d8a4d7695ed9c076f1f0930~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_736ebb262d8a4d7695ed9c076f1f0930~mv2.webp)
![[episode13]ふたりの部屋に灯りはともる](https://static.wixstatic.com/media/114c79_736ebb262d8a4d7695ed9c076f1f0930~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_736ebb262d8a4d7695ed9c076f1f0930~mv2.webp)
[episode13]ふたりの部屋に灯りはともる
誰よりも近くて、誰よりも遠い。 互いに親にも話せない関係を十年続けていると、その事実は愛というより、風景に近くなる。 「なあ、今日こそちゃんと見合いはやらねぇって言ってくれたか?」 終電帰りの夜、濡れた傘を玄関に並べながら、光希(こうき)が聞いた。...
7月29日
![[episode12]黒板消しの白い跡](https://static.wixstatic.com/media/114c79_8b62fd725c2141e3a392097f499edb6c~mv2.png/v1/fill/w_332,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/114c79_8b62fd725c2141e3a392097f499edb6c~mv2.webp)
![[episode12]黒板消しの白い跡](https://static.wixstatic.com/media/114c79_8b62fd725c2141e3a392097f499edb6c~mv2.png/v1/fill/w_299,h_225,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/114c79_8b62fd725c2141e3a392097f499edb6c~mv2.webp)
[episode12]黒板消しの白い跡
卒業式が終わったあとの教室は、静かだった。生徒たちは式を終えるとすぐに帰ってしまい、教室にはもう誰もいない。春の光が差し込む黒板の前で、蓮はひとり立ち尽くしていた。 蓮は中学3年生。病を抱え、高校への進学をあきらめた。入退院を繰り返すなかで迎えた卒業式。式への参加はできなか...
7月26日